日本テレビ系のドラマ「明日、ママがいない」についてのメモ(2)

日本テレビ系のドラマ「明日、ママがいない」についてのメモのつづき。

慎泰俊さんが端的に書いてくれています。

ドラマの設定をよく知るための基礎知識

まず、いくつかの基礎知識について話しておこう。

何らかの事情で親と暮らすことができない子どもは全国に約4万7千人いる。この子どもたちの養育を支える仕組みは社会的養護といわれている。

社会的養護には、施設養護と家庭的養護の2種類がある。前者の代表格が児童養護施設で、家庭的養護の代表格は里親だ。全国に600弱ある児童養護施設には約3万人の子どもがいる一方で、里親家庭で育つ子どもは4000人強にしかならない。欧米ではこの比率は逆転していて、圧倒的に里親が多い。できれば子どもたちは家庭に近い環境で育つのが望ましく、里親の比率を増やすか、施設を家庭に近い環境にすることの重要性は長い間となえられてきた。

子どもが親と離れる理由で一番多いのは虐待だ。虐待の中で特に多いのは育児放棄。他の理由には親の病気、経済的な理由、親の拘禁などがある。児童養護施設は、昔は孤児院と呼ばれていたが、親の死亡によって施設に来る子どもは多くない。

上で述べた理由によって子どもたちはまず児童相談所に預けられ、そこで一時保護された後に、家庭に戻るか親戚などに引き取ってもらうか、施設に行くか、というようにその後が決められる。児童養護施設に行くのはその後だ。ドラマのように夜中に行くということはない。

親やコミュニティとの関係に配慮し、児童養護施設は子どもたちの実家から離れた場所にある場合がほとんどだ(だから、このドラマのようにお母さんの家まで歩いていくのは難しい)。だから、子どもたちは、いきなり見たこともない場所で、1人きり(きょうだいがいる場合は別だが)でまた人間関係を作っていかないといけなくなる。

~中略~

児童養護施設の職員が抱える最大の課題は人手不足で、施設側の悩みのアンケートをとると常にナンバーワンになる。子どものケア職員は、勤務時間に平均して子ども10人の対応をしている。なぜそうなるか、というと、子どもの養護のために割かれる補助金(措置費)がその水準でしか支払われていないからだ。

筆者は児童養護施設に住み込みをしていたので実感するのだが、1人で10人の子どものケアをしようとしたら、毎日が異常に慌ただしく過ぎ去っていく。朝起こして、ご飯を食べさせて、小さい子どもを学校に送って、掃除洗濯をして、帰ってきた子どもの宿題を見て、お風呂に入れて、子どもの成長の記録をつけて、とやっているうちに1日が終わる。

そんな状況だから、子どもが万引きをしたり学校で喧嘩をしたりしたときも、その子どもと職員が一対一でゆっくり話すことがなかなか難しい。施設の職員は子どもの声をもっと聞きたいのにそれができなずフラストレーションが溜まり、子どもからすれば大人は何も分かってくれない、という悲しみをを抱いてもおかしくない。ただでさえ大人と子どもの間には話せない話題があるのに、こういった構造的な理由があるために、子どもは職員に本当のことを話さなくなり、子どもの本音を聞けるのは子どもだけになる。

おそらく、「明日、ママがいない」に対する施設職員側と施設出身者から聞かれる声にギャップがある背景には、この構造的な問題があるのだと思う。

「明日、ママがいない」に見えた深刻なギャップ 児童養護施設役職員と出身者の評価が分かれるわけ - 日経ビジネスオンライン 2014年1月23日(木)